日本の塩のつくり方

採かん

 

 海水を汲み上げ、精密に濾過します。このとき濾過海水は水道水より10倍位きれいになります。この海水を膜で濃縮します。膜は電荷をもった百万分の1mm位の孔のあいた膜で、塩分を選択的に通します。この方法を膜透析といいます。膜を通すためのエネルギーとして直流電気を使います。この濃縮のことを採かんといいます。
  塩分が濃くなった海水のことをかん水といい、海水中の塩分は膜を通すことで塩分を6倍程度に濃くすることができます。電荷をもった膜を使うことと塩分が通る孔が小さいことで、海水中の汚染成分や細菌類は除去されます。この膜濃縮を使うことで、日本の塩は世界で最高レベルの安全性を保つことができるのです。

[透析装置の写真]

 

せんごう

 海水の6倍程度まで膜で濃縮されたかん水を大きな釜で煮詰めて塩にします。釜の大きさは直径5m、高さ15m位の巨大な釜で、通常4つ以上の釜を並べて使います。内部は強く撹拌され、蒸気で加熱します。内部を真空にすることで蒸気量の3倍くらいの蒸発ができます。この方法を真空式とか多重効用式などといって、エネルギーを有効に使う方法なのです。

[真空式の写真]

 釜にはさまざまな粒径の塩が計画通りできるように工夫がされています。
 釜から出てきたドロドロの塩は、遠心分離機で塩と苦汁分に分けます。そのまま出荷するのが湿った塩の並塩や白塩です。これを乾燥した塩が乾燥塩で、食塩や特級塩になります。包装は、20kg、25kgの紙包装、500kg、1トンのフレコン袋、トラック積みのバラ塩、等で出荷されています。食塩は家庭用として1kgポリ袋、5kg紙袋が出荷されています。
 日本の地理や自然条件では、外国のように岩塩、天日塩を生産できません。日本の塩作りを守るため、永年にわたる研究により、世界に誇る日本独自の技術で、安全で安心な、しかも効率よく生産することが実現できました。このように日本の塩作りは、塩田濃縮せんごう塩から膜濃縮せんごう塩に変わり、製塩は大型化され、自動化されて、見かけは手作りの感覚から工場生産に変わってきました。しかしこの製塩法によって海洋汚染物質や細菌から守られる安全な塩の生産が可能となり、過酷な労働から解放されました。しかも価格は非常に安く消費者に供給できるようになったのです。

 

膜透析による海水濃縮の原理

 海水には約3%の塩分が溶けています。塩分はナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムのようなプラス電気をもったイオンと、塩化物イオン、硫酸イオンなどのマイナス電気をもったイオンからできています。膜透析による濃縮はこのイオンとなっている塩分だけを通す膜を使って濃い塩水(かん水)を作る方法です。

海水中の塩分の組成 

プラスイオン          % 

マイナスイオン          % 

 ナトリウムイオン       77.3 

 マグネシウムイオン     17.6 

 カルシウムイオン       3.4 

 カリウムイオン        1.6 

 塩化物イオン        90.2 

 硫酸イオン            9.3 

 重炭酸イオン          0.4 

 

 濃縮用の膜は表面がプラスまたはマイナスの電気を帯びており、百万分の1mmくらいの塩分だけ通る孔があいています。表面が電気を帯びているので同じ電気をもったイオンは反発して通りませんが、反対の電気をもったイオンは通します。プラス電気をもった膜とマイナスイオンをもった膜の両方を使うと塩分だけが通ります。この方法は腎臓透析や水道水の製造などにも応用されています。
 海水の汚染成分には細菌類、石油類、洗剤などの都市排水、船底塗料などさまざまなものがありますが、塩類のイオンに比べて大きく、表面の電気も弱いので、除かれるのです。
 工場で塩をつくるときは、数千枚の膜をセットにして重ね合わせて使います。

 

真空式製塩の原理

 塩水を煮詰めて塩をつくる釜は、製塩土器から始まり、平釜、真空式と発展してきました。
 真空式は大きな密閉釜を3~4ヶ並べ、一方を真空にして110℃(1.5気圧)の蒸気を片方から入れて加熱します。水は真空になるほど低い温度で沸騰します。真空の度合いを換えると、何度も蒸発した蒸気を利用して沸騰させることができます。熱を最後まで利用する方法で、熱利用率は昔の平釜の4~7倍くらいになります。真空式は釜の内部が強く撹拌されているので、サイコロ状の結晶で平釜より硬い塩になります。
 また日本では独自の技術で0.1mmから1.5mm程度までさまざまな粒径の塩を自由につくることができますから、さまざまな用途に適した塩をお届けできるのです。